Braille - JSL

視覚障がい・点字・日本語教育

アブディン モハメド氏の講演を聞いて

前回の記事に続いて、アブディン モハメド氏のご講演についてもご報告したいと思います。


多くの日本語教育関係者が詰めかけた会場で、「見えないからこそみえてきた日本語の面白さ」という題でお話をされました。

 

冒頭、聴衆に向かって「マイクとの距離は大丈夫ですか?ネクタイ、曲がってませんか?」と声をかけられ「日本語の先生の前で話すのはプレッシャーですが、みなさんも私がときどき入れるだじゃれに気づかなかったら、日本語教師としての資質が問われますよ。」とおっしゃり、終始笑いの絶えないご講演が始まりました。


特に印象に残ったのは、漢字についてのお話でした。

「最初、『留学』という単語を知ったとき、『流』と『龍』の二つの漢字しか知らなかったので、おそらく日本に流れ着いて勉強するのだから『流学』だろうとあたりをつけたら、まったく逆の意味の『留』だったので驚いた」とおっしゃっていました。また、「留守」という単語は何年もの間「ルス」とカタカタで書くと思っていたそうです。そういった視点や発想は、私たち晴眼者にはないもので、本当にハッとさせられます。当事者の方からこういったヒントをいただいて、今後の研究に役立てていきたいと思いました。


氏の『わが盲想』(2013,ポプラ社)には、幼少時苦労されたことや、ご家族の葛藤、来日されてからの奮闘ぶりがいきいきと綴られていて、なにごとも前向きにとらえるエネルギッシュなお人柄が伝わってきます。また、ポプラビーチ(ポプラ社のウェブマガジン)でも過去の連載記事を読むことができますので、ご関心のある方はぜひご一読ください。

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