Braille - JSL

視覚障がい・点字・日本語教育

白杖づくり研修

ご報告が遅くなりましたが、3月の中旬にIAVI(2017年10月16日のブログ参照)の留学生2名の白杖づくり研修に同行し、浜松にある視覚障害者のための支援施設ウイズ半田・蜆塚に行ってきました。ウイズ半田、ウイズ蜆塚では視覚障害、または視覚障害と他の障害を併せ持つ方々が点字印刷、白杖の制作、ポプリやマグネットなどの小物づくり、農作物の栽培など、様々な作業を分担し、協力して仕事をこなしています。仕事を通して、一人一人の自立と社会参加を支援するところです。その施設見学と、施設の一角をお借りしての白杖づくり体験をしてきました。
 1日目は午後、ウイズ蜆塚を見学した後で、ウイズ半田に移動し、白杖づくりが始まりました。白杖といってもいろいろありますが、今回、留学生が作ったのは4段になっている折り畳み式の白杖です。杖の中に伸縮ゴムが通っているので、節を外すと4つに折りたたむことができます。まずはパーツ選びから。それぞれの留学生に合った長さのパイプを選び、白いチューブをかぶせます。ぶかぶかのチューブですが、火で温めるとピタッとパイプにくっつくので、両端の余った部分を丁寧にナイフで削ります。ガスで熱するところはウイズの代表であり、今回の白杖づくりの先生でもある斯波さんが手伝ってくれましたが、そのほかの作業は斯波さんの指導の下、留学生がほぼ一人で行いました。
 2日目は1日かけて、ジョイントと呼ばれる節の部分をやすりで削る作業です。削りが甘いと杖を伸ばしたとき節がしっかりはまりませんし、削りすぎると伸ばした杖を地面につけたときにグラグラと揺らいでしまいます。少しずつ、少しずつ、削ってはジョイント部分をはめてみて…を繰り返し、調節しながら慎重に作業を進めました。(でも、削りすぎてやり直しも!)ジョイント部分が削れたら、それぞれのパイプに大きなトンカチでたたいてしっかり固定します。それから、地面に着く先端のパーツ、取っ手の部分を合わせて、パイプの中にゴムを通し、折り畳み式白杖が完成です。一人の留学生は斯波さんに自分の名前を日本語で彫ってもらいました。もう一人の留学生は、手作りの白杖だから、友だちへのプレゼントにしたいと言っていました。1日半の長い作業でしたが、二人ともがんばりました。
 初日には素敵なサプライズもありました。ウイズ蜆塚を見学していた際、作業中のお年寄りが「斯波さん、斯波さん!」と案内してくれていた斯波さんに声を掛けました。「留学生はいつまで浜松にいらっしゃるの?」「明日帰るんだよ。」「じゃあ、ちょっとお聞かせしましょうかねえ。」斯波さんとの会話が続きました。その方は現在86歳。筝曲家で、あの宮城道雄先生のお弟子さんだったのだそうです。また盲学校では音楽教諭として働いていらっしゃいました。そしてその晩、私たちをご自宅にご招待してくださいました。「さくらさくら」や、中国民謡「ジャスミンの花」、お琴で汽車が動き出す場面を表現した「汽車ごっこ」などを演奏してくださいました。また、音楽の先生だけあって20種類もの楽器を演奏なさるそうで、その日はのアコーディオンも演奏してくださいました。お琴もアコーディオンも留学生に触らせてくださったり、実際に演奏させてくださったり、留学生にとっても(私にとっても!)初めての忘れられない経験となりました。86歳とは思えない、力強い演奏、心に響きました。
 自分の手で作った白杖に、素敵な出会いやと音楽・・・きっと心に残る研修になったと思います。

 

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