Braille - JSL

視覚障がい・点字・日本語教育

学習者より:小旅行と講演会参加

以前、日本の大学に留学していた経験を持つ、視覚に障害のあるAさんが、社会人になって久しぶりにその地方を訪れた小旅行と、初めて参加した学会で聞いたアブディンモハメド氏の講演について感想を寄せてくれました。


*以下、本人の承諾を得て、個人情報を伏せ、日本語に翻訳しています。

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以前、日本に留学していた時に教えてくださった先生と一緒に新幹線に乗った。先生が途中駅で下車したあとは、その日泊めてくれる友人がいるところまで、一人で移動することになっていた。新幹線を降りたあとローカル線に乗り換え、友だちに無事会うことができた。以前、日本に留学していた頃は、このようなことを一人でこなすことはまだまだ難しかった。でもいまは、道を歩いていて途中でわからなくなったり、迷子になったりしても、近くを通りかかった人に声をかけて手伝ってもらい、すぐに行くべき道に戻ることができる。


そのあと、友人の家の近くで居酒屋に入り、私の母国の大学に彼が留学していた頃の懐かしい話で盛り上がった。友人との気軽な会話が日本語で楽しめるようになったんだなぁと自分自身の成長を感じてうれしくなった。3年前に初めて来日したときと比べ、人と話したり、電車に乗ったりすることがものすごく簡単になっているということにあらためて気づいて、これまで本当に一生懸命日本語を勉強してきたかいがあったと思った。


次の日も周りの人に手伝ってもらうということがあった。かつての先生や友人に会うため、3年ぶりに「母校」を訪れたのだが、自分で思っていたほど町の記憶が残っていなかったようで、大学の最寄り駅で電車を降りたあと、西に向かっているつもりで東に歩いてしまっていた。15分ほど歩いたあとで、近くの人に教えてもらい、間違っていることに気づいた私は、おとなしく大学行きのバスに乗った。


日曜日は先生と一緒だったので、時間に余裕を持って会場に着くことができた。それで、学会が始まる前にアブディン・モハメド氏(学習院大学教授)と少し話すことができたのだが、彼のその高い日本語能力はもちろん、そのおおらかで社交的な人柄に圧倒されてしまった。なぜなら私にとって目が見えないことでもっとも難しいと感じていることに、慣れない環境での社交的活動があるからだ。それを外国語で行うとなるとさらに複雑になる。アブディン先生は初めての会場で外国語を使って講演を行っているにもかかわらず、最初から最後まで聴衆の注意をひきつけ、絶えずジョークやユーモアを交えて笑わせていて、とても印象的だった。


彼の講演の内容を全部聞き取って理解することは難しかったが、ラジオの野球中継や、故郷スーダンの音楽とどこか似ている演歌を聴いたり、福井の町を歩いたり、手に入った小説を片っ端から読んだりと、どのような小さな機会も日本語学習の機会に変えて学んだという経験談がとても心に響いた。私も積極的に機会を見つけて、いろいろな経験から日本語への理解を深めていきたいと思う。そして英語の新米教師でもある私は、私の生徒にもこのようなインスピレーションを与えていければと思う。